第40回認定超音波検査士試験が、2025年11月23日に行われました。
次回の第41回認定超音波検査士試験(循環器領域)を受験するにあたり、「どんな問題が出るのか」「何を重点的に勉強すべきか」と悩む方は多いのではないでしょうか。
しかし残念ながら、試験では問題の持ち帰りが禁止されていることから、問題の再現は著作権や受験規約違反となります。
そのためこの記事では、問題の傾向を元に、第40回認定超音波検査士試験ではどんな勉強をしていれば合格が出来たのかをまとめました。循環器領域は年々難化していますので、ぜひ受験勉強の参考にしてください。
分野別出題数は?
まず、第40回超音波検査士試験の分野別出題数はこんな感じでした。
・心膜、心筋症…7問
・肺高血圧症…2問
・弁膜症…4問
・心筋梗塞…3問
・腫瘍、血栓…6問
・先天性疾患…4問
・大動脈、解離…3問
・計算法、原理…5問
・計算する…1問
・正常値…3問
・アーチファクト…1問
分類が重複する問題もありますが、今年は心筋症系や腫瘍系の疾患が多かったようです。
具体的には何が問われたのか
ここからは、それぞれ実際にどんなことが問われたのか詳しく見ていきます。
心筋症・心膜疾患
肥大型心筋症(HCM・HOCM)
第40回では、肥大型心筋症について、左室壁肥厚の程度や家族歴などからHCMを考える症例が出題されたとの情報があります。
受験者の記憶では、心室中隔の壁厚が厚く肥大型心筋症の家族歴がある症例について、心エコー画像やドプラ波形をもとに考える内容だったようです。また、SAMのMモード・Bモード画像や、最高血流速度4.5m/s程度の波形が示されていたという情報もあります。
ここで重要なのは、単に「HCMでは左室壁が厚くなる」と覚えるだけではないことです。
HCMを疑う所見
→ SAM
→ LVOT狭窄
→ LVOT血流速度の上昇
→ 圧較差の増大
という流れを理解しておく必要があります。
また、HOCMでは前負荷などの変化によって左室流出路の圧較差が変化するため、「どのような条件でLVOT狭窄が強くなるのか」まで理解しておきたいところです。
心アミロイドーシス
左室壁肥厚症例に関連して、apical sparingについて問われたとの情報があります。さらに、longitudinal strainを用いて心尖部の収縮が相対的に保たれるパターンについて出題されたという受験者の投稿もありました。
心アミロイドーシスを勉強するときは、
- 左室壁肥厚
- 拡張障害
- strain解析
- apical sparing
を関連づけて整理しておくとよいでしょう。
特に、「左室壁が厚い=肥大型心筋症」と単純に判断しないことが重要です。
心サルコイドーシス
心サルコイドーシスについても出題されました。
心サルコイドーシスでは、単に疾患名を覚えるだけでなく、心筋障害による壁運動異常や心室機能低下など、心エコーでどのような異常を捉えるのかを確認しておきたいところです。
不整脈原性右室心筋症(ARVC)
右室収縮能低下や右室拡大など、右室の形態・機能異常について考える内容が出題されました。
加えて、ARVCを勉強するときは右室拡大+右室収縮能低下というエコー所見だけでなく、引き起こされる心電図異常まで把握しておくことで、問題を解く手助けになるかもしれません。
急性心膜炎・収縮性心膜炎
心膜疾患では、急性心膜炎や収縮性心膜炎に関する内容も出題されています。
急性心膜炎については、心嚢液貯留や原因など、疾患の基本的な知識が問われたようです。
収縮性心膜炎は、計測を苦手とする人も多いですよね。
超音波検査学会のeラーニングで、2026年7月に動画が発表されました。特に血行動態についても、視覚的に理解しておきましょう。
- 下大静脈の拡大
- 僧帽弁流入血流の呼吸性変動
- 拡張障害
- 心膜による心室拡張の制限
など、病態と心エコー所見を結びつける知識が重要となります。
心タンポナーデ
心膜液貯留の画像をもとに、右室虚脱など心タンポナーデを示唆する所見についての内容もあったようです。
ここでは、心膜液があるかだけではなく、心膜液によって心腔が圧迫され、拡張が障害されているという血行動態まで理解しておくことがポイントです。
また、心膜液の定量評価は必須条件です。簡単な問いで悔しい思いをしないよう、画像で確認しておきましょうね。
右心系・肺高血圧
肺高血圧症
国際分類のどの群に該当するかを問う内容が出題されています。また、画像から肺高血圧を考える問題もあったようです。
元々評価項目が多いこともあり、基本的な評価が分かれば解ける問題が多いです。
- 肺高血圧の分類
- 肺高血圧を疑う心エコー所見
- 右室への圧負荷
- 右室機能低下
- 右房・右室の拡大
ここら辺の基本的なことが関連づいていれば大丈夫そうですね。
右室機能
第40回では右室機能に関する問題が複数あり、TAPSE、FAC、S’、Tei index、RVEFなど、さまざまな右室機能評価指標について問われたとの情報があります。
ここは非常に重要です。
なぜなら、ここ数年で右心系評価は改めて見直され始めているから。
- TAPSEは何を評価しているのか
- FACは何を表すのか
- S’はどのように測定するのか
- Tei indexは何を反映するのか
シンプルに正常値を問われたとも聞きました。それぞれの指標の意味と正常値をセットで整理しておくとよいでしょう。
弁膜症
僧帽弁狭窄症(MS)
僧帽弁狭窄症では、弁口面積を計算する内容が出題されたとの情報があります。VTIとSVを用いた計算が話題になっていました。
弁膜症の勉強では、疾患の特徴だけでなく、弁口面積、圧較差、血流速度、VTI、重症度評価など、定量評価に必要な計測方法まで確認しておくことが重要です。
僧帽弁逆流(MR)
MRについても出題されたとの情報があります。HOCMや心筋梗塞など、他の病態と関連してMRを考える必要があるため、MRの原因と心エコー所見を整理しておきたいところです。
機能性なのか器質性なのかなど、なぜその計算をするのかまで整理しておきましょう。
大動脈弁逆流(AR)
ARでは、なんと手術適応に関する内容が出題されたようです。
症状の有無だけではありません。
- 左室収縮能
- 左室収縮末期径
- 左室拡張末期径
などを踏まえて判断する内容が挙げられています。
弁膜症では「重症度評価」だけでなく、いつ治療・手術を考えるのかまで勉強しておく必要があることが分かります。これは新しい傾向ですね。
弁膜症は、弁の形態だけでなく、ドプラによる重症度評価や心腔への影響まであわせて整理しておきたい分野です。
AS・AR・MS・MRを中心に試験対策をまとめたので、詳しくは「超音波検査士|循環器の弁膜症対策」で解説しています。
虚血性心疾患・心筋梗塞
心筋梗塞と心電図・壁運動
下壁梗塞の心電図をもとに、心エコーでどのような壁運動異常が予想されるかを考える内容が出題されたようです。
心電図と絡めて、冠動脈支配領域と梗塞部位とを理解するのは必須です。
心筋梗塞後の合併症
心筋梗塞の合併症では、自由壁破裂がどのような部位で起こりやすいかを考える内容もあったようです。
- 自由壁破裂
- 心室中隔穿孔
- 乳頭筋断裂
- 心室瘤
など、どんな時にどんな部位で起こりやすいかまでセットで勉強しておきたいところです。
たこつぼ症候群
たこつぼ型心筋症では、予後不良因子について問う内容が出題されたようです。
単に「心尖部が無収縮になる」という典型像を覚えるだけでなく、左室流出路狭窄など、重症化につながる所見についても確認しておくとよいでしょう。
先天性心疾患
心房中隔欠損症(ASD)
ASDについては、画像をもとにした問題や、右室圧負荷、左右シャント、複数の欠損孔などについて考える内容があったようです。
ASDは、左→右シャントによる右房・右室への容量負荷からの右室拡大という血行動態はもちろん。どの描出像でどの位置になんと言う場所が描出され、穴が見えるのかまで整理しておきましょう。
心室中隔欠損症(VSD)
VSDでは、画像を見て病態を判断する問題に加えて、手術時に注意すべき事項についても問われたとの情報があります。
いままでは発見から最低限の病態評価が出来ればよかったですが、治療のためには何を測る必要があるのかは整理しておいた方が安心かもしれません。
先天性心疾患は、画像だけでなく、解剖・血行動態・治療まで一連で勉強しておくと対応しやすくなります。
動脈管開存症(PDA)
PDAでは、Qpの測定部位について考える内容が出題されたようです。
このような問題からも、先天性心疾患では「疾患の特徴」だけでなく、シャント量をどのように評価するかまで理解しておく必要があることが分かります。
計測法においては、過大評価や過小評価など、注意点も網羅出来れば怖いものなしです。
左上大静脈遺残
左上大静脈遺残については、冠静脈洞拡大との関連が問われたようです。冠静脈洞が拡大している場合に、左上大静脈遺残を考えるという、実際の心エコー検査にもつながる内容です。
先天性心疾患はガイドライン上の範囲が広いため、すべてを同じ深さで覚えようとするとかなり時間がかかります。試験対策としてどこから勉強するかは「超音波検査士|先天性心疾患の試験対策」で整理しています。
大動脈疾患
Marfan症候群・大動脈基部
特にバルサルバ洞の著明な拡大画像をもとに、Marfan症候群などを考える内容が出題されたとの情報があります。
大動脈疾患では、大動脈基部拡大 → Marfan症候群などの背景疾患 → 大動脈弁逆流というように、周辺構造との関連まで理解しておくことが大切です。
解離(近位上行大動脈)
大動脈解離では、解離によって冠動脈などの分枝血管が閉塞する可能性や、フラップの画像所見について考える内容があったようです。
「フラップが見える」で終わらず、解離がどこまで進展すると何が起こるのかまで整理しておきたいところ。真腔や偽腔など、日常で乖離を発見した場合に追加で取る必要があるような評価については、もう一度頭に入れておきましょう。
心臓腫瘍・血栓
乳頭状線維弾性腫
大動脈弁の左室側に腫瘤を認め、その形態から乳頭状線維弾性腫、疣腫、血栓、粘液腫などを鑑別する内容が出題されたとの情報があります。
血栓と腫瘍は、まだまだ心エコーでは評価が難しい症例も多いです。それでも問題になるのは、ある程度分かりやすい症例なのだと思います。試験当日は、深く考えて捻くれないことをお勧めします。
- どこに付着しているか
- どのような形態か
- 可動性はあるか
- 血流があるか
- 基礎疾患は何か
という情報を組み合わせて、シンプルに考えることが重要です。
左房内腫瘤と血流
左房内腫瘤については、カラードプラで腫瘤内に血流がみられる画像をもとに、その血流が何を意味するのかを考える内容もあったようです。腫瘍血管など、腫瘤内部の血流についての知識が必要だったと考えられます。
近年は低流速ドプラにも注目が集まっていますので、可動性が小さく体表近くにあるものについてはドプラによる評価ができるようになるのが標準化していくかもしれません。
腎細胞癌患者の右房内腫瘤
第40回では、腎細胞癌の患者に右房内腫瘤を認めた場合の鑑別についても話題になっています。
腎細胞癌では静脈系への進展が問題になるため、転移性腫瘍や腫瘍塞栓(腫瘍栓)などを考える必要があります。掲示板でも、この点について受験者同士で確認するやり取りがみられました。
これは、「心臓に腫瘤がある」という画像所見だけでなく、患者背景から鑑別を広げる力が求められる問題だったといえます。
左房機能・拡張能
第40回では、左房ストレインや左房stiffness、reservoir functionなど、左房機能に関する内容も出題されたようです。また、左房容積係数について異常値を判断する内容もあったとの情報があります。
左房機能については、左房容積、左房容積係数、reservoir function、strain、stiffnessなどを、それぞれ単独で覚えるのではなく、左室拡張能や左房圧との関係まで整理しておくと理解しやすくなります。
肺静脈血流についても、計測部位や装置設定に関する内容が挙げられています。
心機能・計測問題
第40回の特徴として、計測に関する問題は特に注目しておきたいところです。
EF・Simpson法
EFについては、左室拡張末期容積、収縮末期容積、SVなどを用いて考える内容があり、Simpson法についても出題されています。
・どの値からEFを求めるのか
・Simpson法ではどのように左室をトレースするのか
など、単なるEFの評価だけでなく、算出原理までサラッと確認できると安心です。
左室・左房の計測
左室・左房の計測については、2腔像・4腔像の長軸径の扱いや、左室内腔をどこまでトレースするかなど、実際の計測方法に関する細かな知識も挙げられています。
このような問題は、教科書を読むだけでは曖昧になりやすいので、普段の検査で自分がどのように計測しているのかを確認しながら勉強するとよいでしょう。
アーチファクト
第40回では、多重反射やサイドローブなど、超音波検査の基礎に関する問題も出題されたようです。
アーチファクトは、名前、どんな画像になるか、なぜ起こるのか。この3点をマスターしておきましょう。
第40回から見えた新しい出題傾向【循環器領域】
毎年、試験回ごとに特徴はあるものの、今年目立った新しい出題傾向は以下の3点です。
①弁疾患の治療法
まずは「弁疾患の治療について」です。
遂に公式の参考書だけでなく、ガイドラインを読む必要が出てきました…。
第40回では検査結果からどんな治療法が適応になるか、程度の浅さでした。しかし今後はおそらく、その治療法・手術法に必要な計測についても聞かれることが出てくると予想します。
②周囲血管、臓器との関連
第40回では、周囲血管の疾患の特徴の把握や、血栓閉塞などと絡めるような出題があったようです。
もともと循環器領域の出題範囲には含まれています。しかし、これらが含まれると一気に勉強範囲が広がり負担増となりますよね。
もちろん細かいことは血管領域での出題となることは変わらないかと思いますが、テキストに出る単語に関連する疾患や臓器については一度調べておく必要がありそうです。
くれぐれも、周りの勉強ばかりになって、心臓がおろそかにならないようにしてくださいね。
③計算問題増
最後に、計算問題の増加です。
第40回では知識問題が多かったこともあり、時間調整のために計算問題が増えたのかなと推察しています。
計算問題は頭も気持ちも疲弊しますよね。
対策としては、試験問題用紙に計算過程を記入して、視覚処理して頭を使わないことです。見直しで計算過程のミスに気づけますし、最後まで計算せずとも答えられることもあります。
計算問題にあたると焦りますが、何を求められているかを整理して冷静に対応しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
第40回認定超音波検査士試験(循環器領域)では、単なる知識暗記ではなく、検査結果をどう解釈して臨床にどう結びつけるかが重視されていました。
実際に循環器領域で心エコー業務に携わっている立場から見ても、近年の試験は臨床判断力を問う内容が増えていると感じます。
出題範囲が広がってくると、「どこまで参考書をそろえればいいんだろう」と不安になるかもしれません。
ただ、試験対策のために何冊も買う必要はありません。私が実際に使った参考書・問題集と、それぞれのおすすめ度を別の記事にまとめています。
これから勉強を始める方や、今使っている教材だけで大丈夫か迷っている方はこちらも参考にしてください。
本記事が、認定超音波検査士試験合格を目指す方の勉強方針を立てる一助となれば幸いです。





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