はじめに|先天性心疾患、全部覚えないとダメ?
超音波検査士の循環器領域を勉強していると、先天性心疾患の範囲の広さに困る人も多いのではないでしょうか。
ASDやVSDくらいならまだしも、勉強を進めていくとFallot四徴症、大血管転位、Ebstein奇形、総動脈幹、肺静脈還流異常……と、次から次へと疾患が出てきます。
私も受験勉強をしていたときは、「どれが出るか分からないなら、一通り全部やっておこう」と思って、かなり細かい先天性心疾患までまとめていました。
でも、仕事をしながら全部を同じ深さで勉強するのは本当に大変です。先天性心疾患だけを完璧にしようとしたら、それだけで試験日が来てしまいます。
実際、私が受験したときには、勉強した細かな疾患がすべて出題されたわけではありませんでした。
もちろん、これは私が受験した当時の話です。現在も同じ出題傾向とは限りませんし、「珍しい疾患は勉強しなくていい」とも言い切れません。
そこでこの記事では、日本超音波医学会の「超音波検査士研修ガイドライン」と、これまで当ブログで整理してきた出題傾向をもとに、先天性心疾患をどこまで勉強するかを考えていきます。
全部を完璧にするのではなく、まずは試験対策として優先したいところから押さえていきましょう。
ガイドラインを見ると、先天性心疾患の範囲はかなり広い
日本超音波医学会の超音波検査士研修ガイドラインを見ると、先天性心疾患にはかなり多くの疾患が含まれています。
心房中隔欠損症(ASD)、心室中隔欠損症(VSD)、動脈管開存症(PDA)、Fallot四徴症といった比較的なじみのある疾患だけではありません。
肺動脈狭窄・閉鎖、Ebstein奇形、大血管転位、両大血管右室起始、総動脈幹、肺静脈還流異常、単心室、左上大静脈遺残など、さまざまな疾患が対象になっています。
これを見ると、「やっぱり全部覚えなきゃ」と不安になるかもしれません。
ただ、ガイドラインに載っている疾患をすべて同じ深さで勉強する必要があるかというと、私はそうは考えていません。
限られた勉強時間の中では、まず代表的な疾患について、特徴的な心エコー所見と血行動態を説明できるところまで持っていくことを優先したいです。
この記事では、まずASD・VSDをしっかり押さえ、そのうえでPDA、Fallot四徴症、肺動脈狭窄などへ広げていきます。
その他の先天性心疾患については、余裕があれば範囲を広げていくくらいでもいいでしょう。
「出ないから捨てる」のではなく、勉強する順番をつけるという考え方です。
先天性心疾患は、病名だけでなく「その結果どうなるか」まで考える
先天性心疾患を勉強するときに意識したいのが、病名と特徴を丸暗記して終わらないことです。
心エコーの試験なので、画像から病態を考えられるようにしておきたいところです。
たとえばASDなら、「心房中隔に欠損孔がある」で終わりではありません。
欠損孔を通ってどちら向きに血液が流れるのか。その結果、どの心腔に容量負荷がかかり、心エコーではどのような変化が見えるのか。
ここまでつなげて考えます。
VSDも同じです。
「心室中隔に欠損孔がある」と覚えるだけではなく、欠損孔を介した血流、欠損部位、圧較差、肺高血圧の有無などを一緒に考えていきます。
先天性心疾患を勉強するときは、
どこに構造異常があるのか
→ どこからどこへ血液が流れるのか
→ どこに負荷がかかるのか
→ その結果、心エコーで何が見えるのか
という流れで整理すると、疾患ごとの知識がつながりやすくなります。
過去問分析でも、まずASD・VSDから押さえたい
当ブログではこれまでの循環器領域の出題傾向も整理していますが、先天性心疾患ではASD・VSDをまず優先して勉強しておきたいと考えています。特に、欠損そのものだけではなく、シャントによって生じる心腔の拡大など、二次的な変化まであわせて見ておきたいところです。
次にPDAやFallot四徴症などへ範囲を広げていくと、先天性心疾患を最初から片っ端から覚えるよりも勉強の順番をつけやすくなります。
もちろん、これは「それ以外の疾患は出ない」という意味ではありません。現在の研修ガイドラインにはほかにも多くの先天性心疾患が含まれています。まず代表的な疾患をしっかり理解してから、残りの疾患へ広げていくための優先順位として考えてください。
近年の循環器領域の出題傾向については、「第40回認定超音波検査士試験(循環器)の出題傾向と試験対策」でも詳しくまとめています。先天性心疾患だけでなく、試験全体でどの分野を優先して勉強するか考えたい方はこちらも参考にしてください。
まず押さえたいASD|欠損孔だけを見ない
ASDは、先天性心疾患を勉強するなら最初にしっかり整理しておきたい疾患です。
まず確認したいのは欠損部位です。ASDにはいくつかの病型があるため、「心房中隔に穴がある」で終わらせず、どの位置に欠損があるのかを意識して画像を見るようにします。
そして、ASDで忘れたくないのが右心系への容量負荷です。
一般的な左右シャントでは、左房から右房へ血液が流れ、右房・右室へ流入する血液量が増えます。そのため、右房・右室の拡大などがみられます。
試験勉強では欠損孔そのものに目が行きがちですが、画像を見たときに「右心系が大きい」という情報からASDを考えられるようにしておくと、病態と画像がつながってきます。
カラードプラが提示された場合も、色だけを覚えるのではなく、どこからどこへ血流が向かっているのかを確認しましょう。
ASDでは、欠損部位・シャント血流・右心容量負荷をセットで整理しておくのがおすすめです。
VSD|欠損部位とシャント、その先まで考える
VSDも優先して勉強しておきたい疾患です。
研修ガイドラインでは病型分類だけでなく、膜様部中隔瘤や大動脈弁右冠尖逸脱なども確認項目に含まれています。
そのため、VSDを「心室中隔に穴がある病気」とだけ覚えるのでは不十分です。
どこに欠損があるのか、カラードプラでどのようなシャント血流が見えるのか、ドプラ波形から何が分かるのかまで確認しておきましょう。
特にシャント血流の速度から圧較差を考えるときには、弁膜症でも使った簡易ベルヌーイ式
ΔP=4V²
が出てきます。
先天性心疾患だから特別な計算を覚えるというより、これまで勉強してきたドプラの知識を使って病態を考えるイメージです。
また、VSDでは欠損孔だけを見て終わらず、左心系への容量負荷や肺高血圧など、血行動態によって生じる変化にも目を向けたいところです。
PDA・Fallot四徴症・肺動脈狭窄も押さえておきたい
ASDとVSDを整理できたら、次にPDA、Fallot四徴症、肺動脈狭窄へ広げていきます。
PDA
PDAでは、大動脈と肺動脈の間に交通が残っていることと、その血流を理解することが基本です。
ここでも「PDAの画像を丸暗記する」というより、どこに交通があり、血液がどちらへ流れ、その結果どこに負荷がかかるのかを考えてみてください。
肺高血圧が進行すれば血行動態も変化するため、シャント疾患は肺高血圧と切り離さずに理解しておくと、その後の勉強にもつながります。
Fallot四徴症
Fallot四徴症では、まず4つの特徴を整理しておきます。
心室中隔欠損、大動脈騎乗、右室流出路狭窄、右室肥大です。
ただし、4徴を暗唱できるだけではなく、心エコー画像を見たときに「どの構造を見ているのか」を考えられるようにしておきたいところです。
すべての複雑心奇形を細かく覚える前に、まずFallot四徴症のような代表的な疾患について、解剖と血行動態を画像と結びつけておくほうが勉強しやすいと思います。
肺動脈狭窄
肺動脈狭窄も研修ガイドラインでは先天性心疾患に分類されています。
ここでは狭窄部位だけでなく、ドプラによる血流速度や圧較差、右心系への圧負荷までつなげて考えておきましょう。
なお、日本超音波医学会のFAQでは、肺動脈弁そのものの病変のみが存在し、それによる右心系負荷がみられる症例については、実績提出上「弁疾患」として扱える場合があるとされています。
試験勉強では「これは先天性?弁膜症?」と分類だけにこだわるより、狭窄によって右室にどのような負荷がかかるのかを理解しておくことが大切です。
Eisenmenger症候群はシャント疾患の延長で理解する
Eisenmenger症候群だけを単独で丸暗記するより、ASD・VSD・PDAなどのシャント疾患からつなげて考えると理解しやすくなります。
左右シャントによって肺血流が増加し、長期間にわたって肺循環へ負荷がかかると、肺血管抵抗が上昇して肺高血圧が進行することがあります。
さらに進行するとシャント方向が変化することもあります。
ここまで理解すると、
「欠損孔がある=必ず左から右へ流れる」
と単純に覚えてはいけないことが分かります。
先天性心疾患の勉強は、ここから肺高血圧や右心負荷の勉強にもつながっていきます。
肺高血圧・右心負荷については別の記事で詳しく整理する予定なので、先天性心疾患ではまずこの流れを理解しておけば大丈夫です。
その他の先天性心疾患はどこまで覚える?
ここが一番悩むところだと思います。
研修ガイドラインにはEbstein奇形、大血管転位、肺静脈還流異常、両大血管右室起始、総動脈幹、単心室など、ほかにも多くの先天性心疾患が掲載されています。
当然、試験範囲として考えるなら無視はできません。
ただ、ASDもVSDもよく分かっていない段階で、これらを一つずつ同じ深さでまとめ始めるのはおすすめしません。
まず代表的な疾患を理解してから、勉強時間に余裕があれば範囲を広げていくほうが現実的です。
たとえばEbstein奇形なら三尖弁の付着位置、大血管転位なら心室と大血管のつながりなど、まずはその疾患を特徴づける構造異常を確認するところからでいいと思います。
日本超音波医学会のFAQでも、先天性心疾患については各疾患の特徴的な所見を理解し、適切に描出できることが重視されています。
細かな知識をたくさん集めるより、その疾患では何が普通と違うのかを画像で確認する習慣をつけておきましょう。
画像問題では「病名を当てよう」とする前に見る
ここは、以前のこの記事にも書いていた内容ですが、残しておきたいところです。
先天性心疾患の画像を見た瞬間に「これは何の病気だろう?」と病名当てを始めると、見慣れない画像が出たときに止まってしまいます。
そんなときは、まず画像に写っている情報を一つずつ拾います。
心房・心室の大きさはどうか。中隔に異常はないか。弁や大血管の位置関係はどうか。カラードプラがあれば、血流はどこからどこへ向かっているか。
そして、
「この所見なら、どこに容量負荷または圧負荷がかかる?」
と考えます。
たとえ最初から疾患名が分からなくても、所見と血行動態を一つずつ追っていけば選択肢を絞れることがあります。
これは先天性心疾患だけではなく、弁膜症や肺高血圧の問題でも使える考え方です。
私なら先天性心疾患はこの順番で勉強する
試験まで十分に時間があるなら、研修ガイドラインに沿って幅広く勉強するのが理想です。
でも、仕事をしながら受験する人はそうはいかないことも多いと思います。私自身もそうでした。
限られた時間で勉強するなら、私は次のように進めます。
- ASD・VSDをしっかり理解する
- PDA・Fallot四徴症・肺動脈狭窄を押さえる
- シャントと肺高血圧、Eisenmenger症候群までつなげる
- その他の先天性心疾患は特徴的な構造・所見から範囲を広げる
ここでいう「優先順位が低い」は、「試験に出ない」という意味ではありません。
先天性心疾患は範囲が広いからこそ、最初から全部を完璧にしようとしないことも大切です。
まとめ|先天性心疾患は「全部覚える」より、まず代表疾患を理解する
先天性心疾患を勉強していると、知らない疾患が出てくるたびに不安になって、「これも覚えなきゃ」と勉強範囲がどんどん広がってしまいます。
私も受験したときは一通り勉強しようとして、かなり時間を使いました。
今振り返ると、最初からすべてを同じ深さで勉強するより、ASDやVSDなどの代表的な疾患について、構造異常→異常血流→心臓への負荷→心エコー所見までつなげて理解するほうが先だったと思います。
代表的な疾患が分かるようになったら、そこから少しずつ範囲を広げれば大丈夫です。
「どこまでやっても終わらない」と感じたときは、一度研修ガイドラインに戻って、今勉強していることの優先順位を考えてみてください。
先天性心疾患だけに時間を使いすぎず、弁膜症や心筋症、肺高血圧など、循環器領域全体を勉強する時間も残しておきましょう。
試験全体でどの分野から勉強するか迷っている方は、「認定超音波検査士|循環器領域の攻略法」でも優先順位をまとめています。


